2016年3月23日水曜日

堀米ゆず子 バッハ&ブラームス プロジェクト 第6回 2016.3.21

★★★★★

2016.3.21
兵庫芸文 小ホール

■出演者
ヴァイオリン 堀米ゆず子
ホルン サボルチ・ゼンプレーニ
フルート 工藤重典
ピアノ リュック・ドゥヴォス

■プログラム
ブラームス:ホルン三重奏曲 変ホ長調 op.40
J.S.バッハ:「音楽の捧げもの」より トリオ・ソナタ
―休憩―
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005

アンコール:バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティ―タ第3番 第3楽章


最初のヴァイオリンの音を聞いて驚いた。素晴らしい。ふくよかで美しい。
その後も、芳醇さ、豊かさ、透明感、切なさなどなど、あげればきりがないほどに、豊かな表現があった。ヴァイオリンが体に吸い付いているようで、完全に一体化している感じ。全身が楽器になっている。

とりわけ、最後のバッハでは、心が洗われる気がした。
(時に余分な弦の音が聞こえた気がしたり、聞こえるべき音が聞こえなかったように感じたりもしたが、あまり本質的な問題ではない。)

ピアノは、透明感やメリハリに欠ける印象。ホルンも豊かさと「遠くまで音がとぶ」という感じに欠ける。フルートは、体で、ではなく、口で吹いている感じ。

ヴァイオリンは図抜けた存在だった。

堀米さん、サイン会でもにこにこしておられ、親しみも感じられた。





2016年3月13日日曜日

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 ゴットホルト・シュヴァルツ マタイ受難曲 2016.3.13

★★★★☆

2016.3.13

J.S.バッハ
マタイ受難曲

指揮 ゴットホルト・シュヴァルツ(トーマスカントール)
福音史家/テノール ベンジャミン・ブルンス
イエス/バス クラウス・ヘーガー
ソプラノ シビッラ・ルーベンス
アルト マリー=クロード・シャピュイ
テノール マルティン・ペッツォルト
バス フローリアン・ベッシュ
合唱 ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団
管弦楽 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

兵庫県芸術文化センター

完売とのこと
2回最前列 真ん中寄り

A席(Sはない)12000円(D席4000円もあった)

バッハの最高傑作と言われている曲なので、一度きちんとした演奏を聴きたいと思い、奮発した。
しかし、キリスト教のバックグラウンドはなく、ストーリーに入り込めない。コラールや、楽器の独走になると、いかにもバッハらしい音楽と感じられるが。
演奏自体は、かなり高水準だと思う。ソプラノのルーベンスさんが、声量を抑えて歌っていたのは、そのような歌だからか。歌手の方々は、学校を休んできたように見える合唱団の人も含め、申し分がない。

リュートが加わっていた。また、前半では、リコーダー2をお二人が演奏していた。(後半は引っ込んでおり、拍手の際も再登場しなかったのが残念)リコーダーの音も、意外とよく通る。リュートの音も時折聞こえてきていた。
コンサートマスターとオーボエのソロは聴きごたえ十分。



2016年3月12日土曜日

京都市交響楽団 高関健 マーラー 交響曲第6番 2016.3.12

★★★★★★(通常5つが最高だが、それを凌駕しているので6つとした)

2016.3.12

京都市交響楽団

指揮 高関健

マーラー 交響曲第6番

席は2階バルコニー 右側 R3の14くらいだったか。ちょうど舞台の真ん中あたり。
B席 3500円
席としては、このあたりがいちばんいいのかも。指揮者も、プレイヤーの半分くらいもよく見えるし。
聴こえてくる音のバランスが良くはないが。

席は8~9割しか埋まっていない。2回公演にしてから、空席が目立つ。これほどの演奏なのに。がんばって聴衆を集めないと。

プレトークで、高関さんが言うには、
現在マーラー協会で、交響曲の楽譜新版を編集中で、一部はすでに出版された。
リハーサル中にマーラーが楽譜に書き込んだり、マーラーは書き込むのを忘れたが演奏家が書き入れたものなどを精査し、取り入れた。交響曲第6番では100か所以上が変わったが、普通の人が聞いてもわからないだろう。高関さんも編集していた方々?とやりとりしていた。
また、6番の2楽章、3楽章について、以前マーラー協会が出版した楽譜による スケルツォ→アンダンテ の順でなく、正しい順である アンダンテ→スケルツォ として本日は演奏する。
高関さんは以前もこの順番で演奏したところ、ツイッターでかなり批判されたという。
マーラーは、スケルツォを先にするスコアを書いたが、リハーサルの後、順番をひっくり返したほうがよいと考え、本番ではひっくり返した。マーラーは、生前、3回この曲を指揮したが、いずれもアンダンテが先である。
マーラーの死後、指揮者(メルゲンベルクでよかったかな?)の問い合わせに答えたアルマが、スケルツォが先と答え、マーラー協会の楽譜もその順にしたことで、この順番が固定してしまった。
4楽章のハンマーを2回たたくか3回たたくかという問題は、3回のわけがない。3回めをたたくとする場面では、ハンマーのみが大きな音を出すので、そのようなことはしないはずだ。

舞台右上の方に、木箱と木製大型ハンマー(ふりかぶってたたく)が置いてありました。近いので、よく見えて楽しい。

舞台いっぱいに、110人(マーラーの指示どおり)の演奏家の席。それに指揮者を加えると111人。
高関さんは、舞台下の観客席前をとおって指揮台に。(ヴァイオリンの人たちも同様)

さて、演奏。
これほどまでに素晴らしい演奏を味わえるとは思いもしなかった。
がっちりとした構造の中に魂も感じる演奏だ。1楽章など聞いていて涙が出るほど。人生の苦しみとそれを乗り越えようとする内からの力。乗り越えさせまいとする外からの力。
ありえないほどの名演を、日本人たち主体の演奏で聴けるとは。

演奏家の方々も充実した音を奏でていた。ほとんど非の打ち所がない。
とくに、いつもではあるが、小谷口さんのクラリネットの音色が素晴らしい。ベルアップはたいへんそうだけど。(付け替える時に、一度マウスピースを落としたように見えたが、本当かな。すぐひろってつけて、演奏していた。大したものだ) オーボエのベルアップは、マウスピースがないぶんクラリネットよりもさらに大変そうだが、どうだろうか。ティンパにもいつもどおり曲の骨格をつくっている。昨日の大フィルの演奏家にも聴かせてあげたい。
トランペットも印象的だった。ホルンも安定。
ハープ2台はすぐ前。時に鋭い感じの音も出ていた。
チェレスタ2台もすぐ前。ふわっとした柔らかい音色だ。

高関さんは、前回見たショスタコーヴィチの時よりも、前を見る時間がかなり長い。下を見るのが3分の1くらいか。ハープに出す指示は、素早くかっこいい。(指揮者からみてハーブの方向に座っていたのでよくわかる) ハンマーに指示を出すときのエネルギーの発露の凄さ。古いたとえだが、波動砲発射、とでもいった感じが。この曲を完全に手中におさめている。マーラーは、学生時代から研究していてライフワークだ、とプレトークで言っていただけのことはある。

いつもPACにエキストラで参加していたホルンの岩井理紗子さんがエキストラで来ていた。なつかしい。クラリネットの小谷口さんは、演奏が終わると高関さんが引っ込んでいたあいだにスワブを通していた。
ハープの松村さんは、全て修了後、舞台に残り、アルミ製らしいボックスを開けて、布を取り出し、楽器の木の部分を拭いていた。ハープのお二人、衣装も同じように見えたが(背中が開いていて、ノースリーブに近い)、揃えたのだろうな。

本日のプログラムに、フルートの首席清水さんとホルンの水無瀬さんが卒団するとして、あいさつが載っていた。水無瀬さんは、「この間、大変悲しく辛いこともあり、この気持ちを抱えたまま退職の日を迎えるのは、忸怩たる思いであります」と書いている。

隣りの植物園は春














大阪フィルハーモニー交響楽団 尾高忠明 諏訪内晶子 プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ラフマニノフ 交響曲第2番 他 2016.3.11

プロコフィエフ ★★★★☆
ラフマニノフ  ★☆☆☆☆

2016.3.11

フェスティバルホール

<指揮>尾高忠明
<独奏>諏訪内晶子(ヴァイオリン)

<曲目>
リャードフ/交響詩「魔法にかけられた湖」 作品62

プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品19
アンコール バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ 第2番から アンダンテ

ラフマニノフ/交響曲 第2番 ホ短調 作品27
アンコール エルガー/エニグマ変奏曲第9変奏「ニムロッド」

C席 4000円 2階、最後列(7列だったか)の真ん中やや右
大フィルは高い。一般の聴衆用の最も安い席で4000円。しかも舞台からかなり距離がある。
他の近畿のオーケストラは、一番安い席は、1000円から2000円だ。ザ・シンフォニーホールや、京都コンサートホールであれば、舞台からの距離もかなり近い。

見える範囲は、ほぼ満席

リャードフは、よくわからないうちに終わった。心地よい感じではあった。

プロコフィエフ。

諏訪内さんは、赤のロングドレス(ラメ入り)で登場。品格あり。
諏訪内さんのヴァイオリンは、素晴らしい。
音の輪郭がはっきりし、よく通る。それに加えて、豊かさ、官能、切なさなどを奏でる。
楽器と身体が一体のようだ。
日本人では群を抜いたヴァイオリニスト。

ただし、他の演奏家と同様に、写真と実際のお顔がかなり違う。10年くらい前のベストショットを修正して使っているのではないのだろうか。もうすこし実際の様子に近い写真か、実際の様子よりも崩れた写真を使った方が、実際に見たときの違和感を生まないので、良いのではないかと思う。

オーケストラは、光るものがなかった。それでは4つにとどめた。


ラフマニノフ。
この曲は、情緒豊かでドラマチックな名曲。
しかし、まったく名曲とは思えないような演奏だ。ひどい。
指揮の尾高さんは、暗譜でタクトを持た、妙に悦に入った感じで踊っているが、音楽をつくるための指揮になっているとは思えない。尾高さん自身、アンコールの前にマイクを持って、「楽しく演奏できた」と話していたが、指揮者が楽しければよいわけではない。
音は流れていたが、音楽ではない。感情も、魂も感じない。
演奏については、時に雑だったり乱れたり。ティンパニにメリハリがないのがひどく気になった。中山航介さんを見習ってほしいものだ。ホルンの1stとイングリッシュホルンはいい音色だった。

3週間ほど前に聞いた関西学院大学交響楽団の、この曲の演奏の方が、はるかに素晴らしい。魂があり、音楽があった。この時の指揮は、角田鋼亮さん。
幸いにも、角田さんは、最近、大フィルの指揮者に就任したという。まだ定期演奏会を振ることは予定されていないようだが、尾高さんとは比較にならない優れた資質を持っていると思うので、角田さんと大フィルの将来に期待したい。

(関西学院大学交響楽団と角田鋼亮さんの演奏について
http://yamawoarasazukawawoarasazu.blogspot.jp/2016/02/2016219.html

そうそう、しかしながら、アンコールのエルガーは、とてもしっとりした感じで良かった。
ラフマニノフのあとに、尾高さんがマイクを持って、大フィルはアンコールをやらないのだが、東日本大震災からちょうど5年というのを話題としたあとに、アンコールが始まった。この部分は好感を持てた。

2016年3月9日水曜日

サロメ 指揮 ダン・エッティンガー 東京交響楽団 カミッラ・ニールント クリスティアン・フランツ ハンナ・シュヴァルツ 他 2016.3.6

★★★★☆

2016.3.6

サロメ (リヒャルト・シュトラウス)

指揮 ダン・エッティンガー 
東京交響楽団 

サロメ    :カミッラ・ニールント 

ヘロデ    :クリスティアン・フランツ 

ヘロディアス:ハンナ・シュヴァル

ヨナハーン :グリア・グリムスレイ

ナラボート :望月哲也

ヘロディアスの小姓:加納悦子


新国立劇場

席:2階 R12の4くらいだったか
B席で、10800円 ちなみに Sだと21600円。
比較的舞台に近く、前の人の頭も気にならない。Sの半額と考えるとかなりお値打ちの席だ。
見える範囲では満席

ダンさん指揮の東京交響楽団の演奏。金管が良く伸び、とても心地よい。以前聴いた、さまよえるオランダ人の時とはかなり違う。指揮のダンさんがうまく引き出しているのだろうか。

名前をあげた歌手の方々も、みな、素晴らしく、非の打ちどころがないように聞こえた。加納さんも、よい仕事をしていた。
この劇場は、いつも最上級の歌い手を用意してくれる。大したものだ。

申し分がないような出来とは思うが、歌の曲調があまり好みに合わないので、★は4つにしておいた。

蛇足だが、ニールントさんの踊りは、恰幅の良い体形で、しなやかとはいえない動き。まあ、ダンサーではないので、いいのだろうが。この部分だけダンサーに替えて、という演出の方がよいのかも。